中学校のPTAだより「がんばってますネ先輩」に取り上げていただきました。
せっかくのなので、ブログにも残しておこうと思います。
「俺はカマスになった」
皆さんこんにちは。昨年から中学校の近くで学習塾を始めました。何度かチラシを入れたので、知っている方も多いと思います。
私は今から16年前、2007年に佐田中学校を卒業しました。その後、出雲高校に進み、将来は地元に戻って公務員になろうと考え、都市計画などを学ぶため筑波大学へ進学しました。その後いろいろあって、東京や愛知で働き、昨年佐田町に戻ってきました。
仕事のことや創業の思いはホームページに書いてありますし、3月に発刊されるとのことですので、今回は卒業される皆さんへのメッセージにしたいと思います。
皆さんはカマスという魚を知っていますか。
カマスは、歯が鋭く肉食で、とても気性の荒い魚です。中には体長180センチにもなり、人間を襲う種類もいるそうです。水槽にカマスを入れ、その中にエサとなる小魚を放り込むと、すぐに鋭い歯で襲いかかります。
そんなカマスを使って、ある学者が実験を行いました。水槽に透明の仕切りを付けて、片方にカマス、もう片方に小魚を入れます。するとカマスは、エサを食べようと小魚に襲い掛かります。しかし、仕切りが邪魔で食べることができません。何度も何度も食べようとしますが、仕切りに邪魔をされてしまいます。最終的にカマスはエサを食べることを諦め、仕切りをはずしても小魚を襲わなくなりました。
もう一つ似た話があります。サーカスの象を思い出してみてください。サーカスの象は細いロープ1本で杭に繋がれているだけなのに逃げ出しません。彼の力なら簡単に杭を引き抜いて逃げることができるのに、それをしないのは何故でしょうか。
それは「自分には力がない」と思い込んでいるからです。象は小さい頃に、太くて頑丈な鎖に繋がれます。まだ力が弱い子どもの象は、杭を引き抜いて逃げることはできません。何度も何度も逃げようとしますが、そのたびに失敗し、自分の力の無さを学習します。そして大人になって力が付いても、逃げようとはしなくなります。
カマスも象も、何度も失敗し、諦めることを学習したのです。
私たち人間も同じです。過去の経験、失敗、子どもの頃に出来なかった事。ただそれだけで、私たちは沢山のことを「出来ない」と思いながら生きています。壁なんて無いのに、能力を持っているのに、もう二度と魚に襲いかかることもせず、杭から自由になろうともしません。更には今の日本を覆う閉塞感。私たちは、他人の失敗からも諦めることを学び、それが伝染しているようにすら思います。
佐田町に塾を開こうと考えた時に、できない理由を探すのは簡単です。少子高齢化が深刻、子どもの数は少ないし、これからも減っていく。しかし、いくらできない理由を挙げたところで塾はできません。でも、これからの町の未来を考えたらあったほうが良い。となったらもう「出来る」と思ってやるしかありません。「あんなに良い教育環境があるなら佐田で子育てをしよう!」と思ってもらえるように頑張る。そして佐田に帰ってくる人を1人でも2人でも増やす。できない理由を探すよりできる方法を考える。これが大事だと思います。
さて、実は最初のカマスの話には続きがあります。
仕切りをはずした状態で、新たに別のカマスを水槽に入れるとどうでしょう。当然新しいカマスは小魚に襲いかかります。するとそれを見た最初のカマスは、まるで目が覚めたように、猛然と小魚に襲いかかるようになるそうです。
1年前を思い出してください。
佐田町に学習塾ができるなんて考えられましたか。
高校へのスクールバスの実証実験が行われるなんて想像できたでしょうか。
俺は獰猛なカマスになった。
みんなはどうだ。
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